陶器の巣箱
 もう20年以上前のことだが、東急ハンズで巣箱キットを買って庭木に取り付けたところ、すぐにシジュウカラが住みついてくれて大喜びしたことがある。雛が巣立って親鳥も帰ってこなくなった頃になると中の巣を取り除いてきれいにして翌年を待った。しばらくは毎年やってきたが、4年ほど経った頃からは飛んでは来るものの、巣は一向に作らなくなってしまった。ひょっとしたら来たのは同じカップルで、歳を取ったから巣が必要なくなったのかも知れないとか、木製だから風雨にさらされボロ家なったせいかも知れないとか思ったりしたが、結局それっきりになってしまった。
我家には、数々の種類の野鳥がやってくる。久々に巣箱をかけてみたくなり東急ハンズに行ったが、ずいぶん前から扱わなくなったとのこと。買う人がいなくなったのだろうか? しかたなく陶器で作ってみた。これだと木のようにくさらない上に、定規も鋸も使わず簡単に作れる。ネットで調べてみると何人かの陶芸家が作っていたし、販売しているものもあった。やはり考えることは同じだ。
直射日光に当たらず、見えやすく、しかも鳥と目が合わない角度、さらに蛇など外敵対策を考えて空中に据え付けてみた。水浴びもできるように近くに皿も取り付けた。最高の住環境だと思えるが、はたして小鳥にとってはどうか。('10/ 2/26)

 4月に入るとシジュウカラがやってきた。ずいぶん長く巣箱の前で思案していたようだったけれど、結局のところ翌日になってもやってこなかったのは、不合格と見なされたのだろう。シジュウカラにとっては入り口が大きいし、深さも足らなかったのだと思う。しかし少なくも拒絶されないことだけは分かったので、改良して別の巣箱を作ってみた。今度はあまり陽が当たらないが二階のデスクから見える位置にした。アメリカの老夫婦が高い枝に幾つもの巣箱をロープでぶら下げているのをテレビで見た。風でゆらゆら揺れるけれど、ちゃんと入ってくれるのだそうだ。いずれ小鳥の出入りするショットが掲載したいと思うし、陶器の巣箱も今後のテーマのひとつにしたいと思っている。(2010.4.11)

 相変わらず夜型生活が続く我が家では、集団登校する小学生に向かって吠えるアフガンハウンドの声が目覚まし替わりになっている。ウグイスは夜型であるはずはないけれど、この辺りでは丁度その頃から啼き始めてくれるので大いに助かっているが、ある朝、盛んに鳴くシジュウカラの声で目が覚めた。もしや後に取り付けた巣箱に来たのではと、寝室のブラインドをそっと開けてみた。タイミングが良すぎるというか悪すぎるというか、ちょうど巣箱から顔を出したところで、しっかりこちらと目が合ってしまった。1〜2秒見つめ合っただろうか、すぐに飛び出してしまった。その後は、近くで鳴き声はするけれども一向に戻ってくる気配がない。まだ卵を産む前だったから残念ながら見限られてしまったたのだろう。新しいカップルを待つしかない。しかし陶器の巣箱が野鳥に受け入れられることだけは、はっきりした。(10/5/20)

 今では木製の巣箱の形にとらわれず、ロクロ成形できる最下段の形に落ちついた。