水切れ抜群の片口
 日本酒が好きで徳利や盃など器にこっていたことから、40才を過ぎて日本工芸会の山上憲一先生に手ほどきを受け陶芸を始めた。その後、縁あって神社の境内に陶芸工房を持つこととなった。今考えれば冷や汗ものだが、作品を出しくれるお店もあって、それなりに売れてしまったのは、世の中景気が良かったせいなのだろう。
 その後バブル経済崩壊で陶芸どころではなくなり、工房から足が遠のいてしまったが、その間、益子の作家であった従姉妹が陶芸教室を開いてくれたおかげで工房が存続している。
 ようやく時間や気持ちの余裕ができたので、手始めに片口を作ることから再出発したところだ。その中のひとつに、我ながら驚くほど水切れのよいものができ上がった。5合ほども入る大きさだが、ぐい呑みに酒を注いでも一滴も零れない。陶器は磁器と比べると厚みがあるので、水ものは注ぎ口からしたたることが多い。そんな場合は食器に使える撥水剤を塗布することでくい止める方法もある。しかし無害とはいえ使わないですめばそれに越したことはないと思っている。
 この作品は、器の大きさに比して口を小さくして反り返りを加えてみたが、それ以外に口の先端部分に丸みを持たせず、やや尖り気味にしたことが良かったようだった。
単純なことだが、しっかり覚えておきたい。