野良ドリ
 弥生台駅から5分ほどの所で一羽のニワトリを見かけた。付近は野良猫も多いし、クルマもよく通るし非常に危ないので、隣接の農家に伝えに行ったところ、逃げたのではなく昨年末か今年始めに誰かが捨てていったもので、朝はコケコッコーとうるさいのだという。私のように知らせに来る人が時々いると云って笑っていた。その後も天気のよい日には必ず見かけるので、注意して見ると、虫や草などを食べている。どうやら付近の野良猫は毎日老女から餌をもらっているからか襲うこともないらしい。それに車道に出ているのも見かけたことがないから、危険なことは分かっているのだろう。夜になれば安全なねぐらも確保しているのだと思う。
 間もなく10月になるが、当初に比べると身体もずいぶん逞しく美しくなった。今回写真を撮るため近づいのだが、まったく物怖じしない。実に堂々としている。とさかが変わっているので調べたところ、烏骨鶏とわかった。小さい割には足が大きくて強そうだし、目もなかなか愛嬌がある。誰に依存することなくこんなに元気で自由に暮らすニワトリも珍しいだろう。考えてみれば羨ましい気もする。いつまでも町の人気者でいてもらいたいものだ。
 その後駅に向かうときは無事かどうか必ず確認するようになった。姿が見えないと非常に心配になるが、次に行くと必ずいるのでそのたびにホッとする。12月20日、友人のソバ打ち忘年会に招かれた帰りに久しぶりに撮った。警戒心どころか、こちらが後ずさりしなければならないほど近づいてきた。おかげでこんな大アップの顔写真が撮れた。野良ドリにしてはきれいな目をしてるような気がするのは、危害を加える人がいないせいなのだろうか。

 と思っていたのだが、ついに何回通っても見かけなくなってしまった。あんなに元気だったから病気ではなかったようだし、事故に遭ったとも思えない、おそらく寿命だったのかもしれない。一年余りの間だが多く人々に愛され、幸せだったにちがいない。(10/5/15)